蝉の声といっても住宅地で鳴く蝉は油蝉が中心なので、この辺りだと蜩の声を
聞くためには銀河の丘を越えなければならない。
そういえば、銀河の丘には半年近く行っていない気がする。
思い立って夕方、風が少し涼しくなるのを待って散歩に出た。
銀河の丘を登る少し手前の木に「猫の里親を求む」の張り紙がはってあった。
立ち止まってJ氏と見ていると、犬を散歩させているご婦人が友人の家だから是
非見ていってくれと言う。
(すぐ目の前のお宅だった事もあり)つい立ち寄って駅前に捨てられていたと
いう仔猫を拝見する事となった。
本当に小さな三毛猫の子猫でまだミルクが必要と思えた。
捨て猫として暮らした何日間のダメージが体に現われてもいて、猫を抱えて動
物病院通いをすることに若干懲りている私は、もう少し考えさせてもらうこと
にしてその家をおいとました。
日立研究所の柵を曲がっていつもの散歩コースに入った辺りから、蜩の声が聞
こえ始めた。
もっとも、蜩ばかりではなく夕方ねぐらに帰ってきた鳥たちの声もあちらこち
らでして、森はなにかとにぎにぎしかった。
祈りの木の辺りは一面の葛原で、同時に烏瓜も群れ咲いている。
烏瓜の花が咲くにはほんの少し時間が早かったので、そこで「祈りの木」に抱
きついてザラザラした暖かい樹皮を感じながら自然と同化をはかったり、入道
雲が夕日に赤く染まるのを見上げたりして、烏瓜が花がひらくのを待った。
ほどなく、目の前で花は解きほぐれるように咲き始めた。
無数の白い花が夏の夜の夢をここで密かに吐きながら、人々のもとに送り届け
ているのではないかという気さえする不思議な花である。
今日はここで折り返し無理をせずに帰ることにした。