11月26日(月)
今年の木枯らし一番は18日の日曜の風でした。
何故、こんなにハッキリ覚えているかというと、私が「あ、木枯らし一
番!」と思ったのと、天気予報の発表と一緒だったからです。
「春一番」でも「木枯らし一番」でも公的発表にはそれなりの科学的裏付
けが有っての事らしいのですが、時折私の感性とズレル事があります。
私的に春一番は、風が地上のあらゆるものを巻き上げて、大地を荒々しく
駆け抜けた時です。
まるで地中で眠っている全てのものをたたき起こすかのように。
木枯らし一番は木々の梢や電線が、ひゅーんと唸り声を上げた時。
空に青い月なんか出ていると実に確定的です。
しかし、今年は全くいつもとは違う判断基準で私は木枯らし一番を確認し
ました。
それは、とあるスーパの屋上パーキングで、車を止めて店の入り口に歩
き始めた時です。突然の突風が私の帽子を吹き飛ばしてくれたのです。
帽子はくるくる回りながらコンクリートの上を引き飛ばされていきます。
前方のご婦人が腰をかがめて帽子を拾って下さろうとしたのですが、帽子
はまるで生き物のように彼女の手元をくぐり抜け、パーキングの端っこの
フェンスまで来て止まりました。
思わぬ駆けっこを強いられ、やれやれと埃まみれの黒いフェルトの帽子を
拾い上げ、見上げた空の青さ。(木枯らし一番?)と思ったわけです。
古い帽子ではありますが、愛着のある帽子です。
ここでさらに風に舞いあげられたら、碓氷峠から渓谷に落ちて行った麦藁
帽子のように2度と手元には戻って来ないでしょう。
いや、この辺りで帽子を飛ばしたら西条八十の詩のように、帽子がキリギ
リスの宿になるなんてロマンチックな事も考えられません。
車が轢くか、人が踏みつけるか、、、そんなところです。
これから風の強い日が多くなる事、間違いありません。
みなさまもどうぞ帽子をビルの谷間に落としたりしませんように。
(それにしても、碓氷峠で野生の猿を見た遠い日が懐かしいです。)